第四十四回 「☆ とれびあ〜ん な フランス家庭料理」  

                          写真と文 網井 詩織



 


「死んでもラッパは離さない」(うう、これって一体何人に通じるだろう??)的に何があっても最優先でぜひぜひ参加せずにはいられないNiki's kitchen。

近頃では趣味というよりADDICTとなりつつある?

Niki's kitchenは単なる「お料理教室」ではなく「お料理ホスピタリティー」体験の場所。作り方だけ習いたければそういうクラスは他にいくらでもある。でも、作って食べてそしてお話して、世界各国の家庭のおもてなしを一般の家庭で体験できるというのはなかなか得がたい。楽しくおいしくいただいて、私たちも十分楽しんで、そうして迎えてくださる先生も楽しんでお互い笑顔になれるのが至福の時、と思うから、かなりなことがあっても万難排して出かけるのであります。

そうして幸せ(?)太りしてゆくのですがね…(苦笑)。

さてさて、
今回はフランス家庭料理の二回目。先生のジャックはなかなかスパイシーなフレンチ。ちょっと辛辣。たとえば「誰か冷蔵庫開けて下さーい」というから開けると「ハイ、中見ないでね。写真もダメね。閉めて。ハイ、アリガト」と、一人ボケつっこみ? みたいなマシンガントーク。最初はびっくりするけれど、それが"芸風"とわかってしまうと、結構"味"があって楽しめる(爆)。一部地域では早くも「フランス親父」という愛称?も囁かれている、とか。

コメディ・フランセーズのご出身ですか?  と問いたくなりますよん。
私たちにもコメディ・ヨシモト・ジャポネのスピリットはある、かな? 
1ピンチ オブ フレンチジョークに今は醤油一滴くらいでしか"応戦"できないけど、そのうち1TB オブ 一味唐辛子くらいはお返ししなくちゃね(ははは)。

それはさておき

今日のメニューはAubergines a la Provencal、 Bouillabaisse そしてTarte Cremeuse a l'orabge(いやーん、みんなフランス語…当たり前だけど…スペル間違えてても勘弁ね、しるぶぶれ〜)。


@Aubergines a la Provencal

なすを厳密に2〜3ミリにカット(厚すぎると"直される")し、ソテーしたものをエシャロットとシェリー酒で作ったvinaigretteでマリネし、グリーンべジとプチトマトを飾ったキュートな前菜。

(本人たちの気持ちとしては)丁寧に盛り付けをしていると「遅いね〜」とすかさず突っ込まれ、トマトの飾り方が雑だと「きれいじゃないね〜」と突っ込まれる。繊細といえば繊細でもあり、とはいえその芸風は「太田プロ」系芸人さん? しばしばこちらはきょっとーん。ジャックはノンシャラン。うむむ…


@Bouillabaisse

世界三大スープの一つと言われるブイヤベース。

これが食べたかった! し、作れればなお、とれびあ〜んざます。ほかの先生のクラスで既に三大のうちトムヤンクンは習得済みなので、あとは…これが意見の分かれるところでふかひれスープなのか、ボルシチなのか…どっちでもおいしければOKなんだけどねえ。

と、話がそれたついでに

ブイヤベースはヴィーナスが眠らせるために夫に食べさせ、その間に火星の神・マースと逢瀬を楽しんだのが起源、らしい。

わお、"禁断の恋"の味?

神様ったらイケズ。

シェー、ミーにはわからないザンス(『おそ松くん』のイヤミはパリ帰り…ってこれも何人通じるの??)。


…という話はさておき、

ホントに素敵なスープです。
沢山の野菜と魚介を入れて、自然の恵みを感じます。お肉も「食らう!」って感じが好きだけど、野菜&魚介の組み合わせは何だか感謝の気持ちすら湧いてきて、もちろん美味しく完食。さらにスープにはaioliソースを塗ってチーズをトッピングしたトーストが絶妙に合う! とれびあ〜ん♪ ジャック先生のこだわりなどもメモりつつ、ぜひ家でもトライすべし! と思ったのであります。

@Tarte Cremeuse a l'orabge

サクサクのタルト生地のヒミツはへーゼルナッツパウダー? 香ばしくてこれだけでもイケル。そしてクリームはオレンジゼストが効いててとっても爽やか。このクリーム作りにジャックのこだわり炸裂! 泡立て器をハイスピードで回しながら「おお〜今日はダメかも〜。誰のせいですか〜?」と訊ねるから、そろそろ芸風に馴れて来たみんなに一斉に「ジャック!」と指さされてましたが(きゃはは)。

もちろんそんな努力の甲斐あって出来上がりはもちろん、とれびあ〜ん。
(ここでムッシュ・ピエール…マジシャンざますよ…のように掌ひとつ回したくなります)。

ちなみに写真は「タルト・クレーム・アラ・ロランジュ "オヤジーヌ"」。

京都のオ・グルニエ・ドールで修行した、かった、私めが一本毛のような金の飾りをつけてみました(ジャックの分に)。さらに渦巻きクッキーを飾ればオヤジ度アップ、カトちゃん、pe ? とみなさまから絶賛(??)頂きました。

但し、なぜか本人のことじゃないのに「オヤジ?誰?」と敏感に反応していたので、内緒です(爆)。

こうしてお料理が出来上がりジャックの「ボナペティ」の声がかかるとそこはシュールな古ーい日本家屋からフレンチビストロに変身。ジャックさんのモットーは「作ったら美味しいうちに食べて!」。そして「満腹よりもうちょっと食べたいが一番幸せ」とも。確かに満腹目一杯もよいけれど、昼下がりのビストロで食事する客人気分でまったりのんびりできるのは至福の時。コーヒーカップがハート型でみんながかわいい!を連発したら「ハイ、可愛いは一回でオワリ」と最後の突っ込みが入りましたが、終始ハートフルなひとときでした。

そして、ジャック'S レシピの素晴らしいことはレストランで出てくるようなメニューが家でも作れる! ということ。フレンチというと"おたかーい"という先入観がありますが、考えてみたらフランス人がみんな毎日三ツ星に通っているわけでもなく、家庭で作られている料理こそがその国の国民食なわけですよね。あ、そういえばこの教室のタイトルこそ『フランス家庭料理』でした。そーよねー^^

…などど妙に感心しながらロゼワインでまったりしているジャックさんを今一度見直すと…

某生徒さん 「このワインおいしいですね」
ジャック  「そう? 美味しいのしか買わないよ。もったいないから」
某生徒さん 「どこで買ったんですか?」
ジャック  「おしえな〜い」
生徒数名  「え〜、教えて〜」
ジャック  「別に」

…うーん、この芸風になれるにはまだ修行が…

そう、
またまた外せないクラスが増えた予感。
そして体重も…

あ、ラヴィアンローズだわあん^^




エッセイストの紹介
網井 詩織

小説、演劇台本を中心に、メールマガジン等を執筆。
料理はメニューのみならずホスピタリティをも含めて
「生活の中のパフォーマンス」として興味津々の分野。

文藝春秋社・菊池寛ドラマ賞、青年劇場記念戯曲賞奨励賞受賞、
文化庁舞台芸術創作奨励賞最終候補

上智大学卒