メキシコ料理  ロシオ 

 

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 ドイツで食べ物といえば? ほとんどの人が最初に思い浮かべるのがこのじゃ がいも。ジャーマンポテトという料理が日本の居酒屋メニューにもなじんでしま うくらい、ドイツといえばじゃがいも、のイメージは強い。でも実のところ、最 近のドイツではあまりじゃがいもを食べなくなっているらしい。主食の座はパン に奪われ、アメリカ型のファストフード文化が浸透して、じゃがいもはすっかり 脇に押しやられてしまった。  とはいっても、前菜、メインディッシュの付け合わせにと、活躍の場は変われ どその存在感はいまだに健在だ。時代は変わってもみんなに愛される、じゃがい も料理の秘密が見つかるかも……そんな思いを抱きながら、ペトラの家を訪れた 。
 

 今回のメニューは前菜にオニオンケーキ、ポテトスープ、メインディッシュが ポークロインのロースト、そしてデザートが桃ののったチーズケーキだ。
 まず、焼くのに時間のかかるチーズケーキからスタート。砂糖・マーガリン・ 卵をボールに入れハンドミキサーでよく攪拌。そこにベーキングパウダーと合わ せた小麦粉を加えてよく混ぜる。型にマーガリンを薄く塗り、生地を底に延ばす 。クリームチーズは卵と砂糖を加えてなめらかになるまで混ぜてから生地の上に たっぷり塗る。その上に缶汁をよく切った缶詰の黄桃を均等に並べてオーブンで 焼けばOK。
「180度で30分ぐらいかな」とペトラは言うが、温度は計っていないのでよくわか らないらしい。「正確な温度で焼くのは大事なことだけど、お家によってオーブ ンの性能は違うし、その日の生地の状態でも変わってくるから、30分よりちょっ と手前でいったん様子を見てね」ということだ。竹串か何かをさしてみて、生地 がついてこなければいいのだそう。トッピングされているクリームチーズはケー キが焼けても柔らかいままなので、ついてくるのがどちらかわからなければなめ てみるのも手だ。ちなみに上に乗せる果物は、桃のほかにチェリーやみかん、ま たはケシ粒などもおいしいらしい。

 ケーキをオーブンに入れたところで、次にポテトスープにとりかかる。が、ポ テトスープといっても、材料はじゃがいも、人参、たまねぎ、ニンニクと盛りだ くさんだ。これらをすべて大きな鍋に入れ、スープの素そしてポテトスープに欠 かせないマジョラムとローレルを加えてほんの少しの水で煮ていく。マジョラム の風味がこのスープの特徴なのでこれは忘れないように。なければオレガノでも いいそうだが、マジョラムに比べ香りがやや弱いので少し多めに。またスープを 煮るときの水はあくまで控え目に、鍋の底に少し溜まるぐらいで十分だ。野菜か ら水が出るし、万が一なくなったら途中で足すこともできるから大丈夫。むしろ 水が多すぎて、スープがびちゃびちゃになってしまうことがないように気をつけ るのがポイントらしい。
 野菜が柔らかく煮えたら、煮汁ごとミキサーにかけてピュレ状に。ここで味を 見て必要なら塩こしょうを加え、ピュレがあまりにもったりしているようならス ープの素を濃い目に溶かしたものを足すが、後で生クリームを加えるのでくれぐ れも薄めすぎないように。これでスープは完成。野菜とスパイスの合わさったお いしそうな香りがする。ポイントはマジョラムを入れ忘れないことと、粘りを出 さないようパッパと手早く作ることだそうだ。
 スープの野菜を煮始めたら、次はオニオンケーキだ。ケーキといっても甘くな く、イーストの入った生地の上に生クリームベースのソースとたっぷりのたまね ぎを乗せて焼くピザのようなパン料理。今回は前菜としていただくが、軽い食事 やおやつにもなる。ペトラの子どもたちの大好物でもあり、多いときには週に2 回作ることもあるペトラの得意料理だ。今回は発酵時間がかかるため、生地の部 分は前もってペトラが作っておいてくれた。後は生クリームにスープの素・イタリアンハーブを加えたソースを塗り、細く切ったハムとたまねぎのスライスを乗 せてオーブンで焼くだけなのだが……(たまねぎを大量に乗せるため、スライス 作業はなかなか苦しく、目を刺す刺激との闘いに)。

 ところでオニオンケーキというのはドイツ国内あちこちで見られる料理で、フ ランスに近づくとキッシュロレーヌのような丸くてクリーミーなタルト状になり 、東に寄るにつれ四角いピザのような形になるらしい。生地もイーストを使うも のとベーキングパウダーを使うものがあり、ソースも生クリームだったり、サワ ークリームだったり、卵が入っていたりいろいろ。たまねぎも炒めて使うものも あれば、生のまま乗せるものもあり、非常にバリエーション豊富な郷土料理なの だ。ちなみにオニオンケーキを一番よく食べる季節は秋。まだ発酵途中の甘めの ワインと一緒にいただくのが、ドイツのワイン生産地付近の秋の風物誌、季節を 感じさせる名コンビだそうである。

 オニオンケーキは焼きたてを食べるのが鉄則なので、頃合を見計らってオーブ ンへ。その間にメインディッシュのポークを焼き、付け合わせのじゃがいもを用 意する。ドイツ人で作らない人はいないという「塩じゃがいも」、伝統料理の中 の伝統料理だ。作り方は極めて単純、じゃがいもの皮をむいて適当な大きさに切 り、塩を入れた水で蒸し煮する。ただそれだけだが、やはりそこにもペトラには こだわりがあった。ポテトスープと同じように、ここでも水は少なめ、焦げ付か ないようにするだけだ。途中で様子を見て、足りないようなら少しずつ足せばい いという。本来はこういう作り方ではなく、ひたひたの水を入れて茹で、やわら かくなったら水を捨てていたらしい。でも栄養やうまみが溶け出した茹で湯を捨 てるのはもったいないと考えたペトラは今のような作り方に変えたのだそう。伝 統料理の中に生かされる新しい知恵……茹でただけのポテトが何だか特別 な料理 に見えてきて、試食したくてたまらなくなる。が、ぐっと我慢してポークの準備 へ。

 このメインディッシュはとても簡単。塩を擦り込んだ豚ヒレ肉にフライパンで 焼き色を付け、グリーンペッパーをまぶして蓋をし25分。火の通った肉を取り出 した後、フライパンに残った肉汁をかきまぜながら小麦粉をふり入れ、スープの 素と水を加えて味を調節、最後に生クリームを加えるとソースの出来上がり。ポ ークロインをスライスし、ソースとポテト、ソテーしたミックスベジタブルを添 えて、さあ食卓へ。

 試食は、焼き立てのオニオンケーキとポテトスープから始まる。オニオンケー キはふんわりしたパン生地の上にたっぷりのたまねぎが乗ったピザのようなイメ ージ。ライ麦の入った生地が香ばしい。ポテトスープはマジョラムの風味が効い た大人の味。たっぷり入った野菜のとろみがきいて、これだけで十分おなかがい っぱいになってしまうボリュームだ。
 次にポークロイン。食欲をそそる焼き色に、ミックスベジタブルの色調がよく 映える。食べてみて、まずその柔らかさにびっくりだ。比較的短時間焼いただけ でも柔らかく食べやすい状態に調理できるのはまさにヒレ肉ならでは。グリーン ペッパーの程よい辛味がよく合って、ちょっと奮発しても試してみたい味である 。それに、添えられた塩じゃがいもがたまらなくおいしい。塩が中までしみて、 芋のもつ甘さが引き立っている。さすが伝統の味である。さらに水を控え目にし たお陰でうまみもしっかり。この方法はこれから是非真似していきたいと思わせ られた。

 最後はデザート。甘さ控え目のタルト部分に酸味のあるクリームチーズと、黄 桃の独特の食感が絶妙に合って、食後でおなかいっぱいのはずなのにぱくぱく食 べられてしまう。それにしてもペトラのケーキは大きい。小さめに切っても普通 のサイズとは大違い。やはりここでは、巨大な甘い甘いケーキにたっぷりのクリ ームを添えて食べるジャーマンスイーツの基準が生きているのかもしれない。

 食後は、ペトラの日本語が目覚ましい勢いで上達していることから、日本語も 交えた賑やかなおしゃべりとなった。現在日本語の先生のプライベ−トレッスン を受けているペトラの上達ぶりには、先生も驚いているそうだ。易しくわかりや すい表現を心掛ければ、かなりのことが日本語で話せる。旅行のこと、ケーキバ イキングのこと、ペトラの大好きな鎌倉のこと……テーブルの上では、日本とド イツ、それにペトラが今までに暮らしたポルトガルやそのほかのヨーロッパの国 々の話題が英語で、日本語で、そして時にはドイツ語で飛び交い、まさに多文化 が交錯する賑やかな空間となった。

 考えてみれば、テーブルトークに至る前の食卓の風景も、さまざまな文化の出 会いの場だった。並べられているのは確かにドイツ料理だったけれど、伝統の塩 じゃがいもをのぞけば、ペトラがドイツ国内外のさまざまなところで暮らしなが らアレンジを加えていった、いろいろな時代と文化の集合体だ。ドイツ料理にフ ランスやイタリアのテイストが加わり、それをオーストラリア産の赤ワインとと もにいただく。伝統的なドイツの郷土料理だけを作っていたという彼女のおばあ さんとは対称的だ。ドイツの食の象徴であったじゃがいも料理も、ペトラのレシ ピのようにさまざまな文化のいいところを吸い込みながら、これからも生き続け ていくに違いない。

 これからはドイツはもちろん、イタリアやポルトガルの味も伝えていきたいと 張り切るペトラ。その文化の色とりどりの食卓から、これからも目が離せない。


◆ 『  オ ニ オ ン ケ ー キ  』  ◆

●<材料>
生地用:
小麦粉 500g 
ライ麦粉 100g
イースト 
茶匙2杯
砂糖 ひとつまみ
塩 茶匙2杯
ぬるま湯 約400cc

トッピング用:
たまねぎ 5〜7個(お好みで)
にんにく 5かけ
ベーコンまたはハム 200g
生クリーム 150cc
スープの素 1個 プロバンス風
ハーブミックス(なければイタリアンパセリなど)

●<作り方>

1・初めに生地を作る。イーストとぬるま湯少々、砂糖をボールに入れ、暖かい ところに15分ほど置く。その後、生地に使うほかの材料すべてとともにこね混ぜ 、暖かいところで最低1時間発酵させる。(ペトラは大きなボールに小麦粉を入れ 、中央にくぼみを作ってそこにぬるま湯、砂糖を入れてボールごとごく低温に設 定したオーブンに入れていました。その後塩を加えてこね、発酵させるのだそう です。)

2・発酵させた生地をこね直し、油を塗った天板の上に伸ばして10分ほど休ませ る。

3・たまねぎは薄く切り、にんにくはみじん切り、ハム類は細い千切りにする。

4・生クリームにスープの素を砕いて混ぜたものを2の生地の上に塗り、その上 に3をまんべんなく広げる。ハーブミックスを振り、180度のオーブンで25分ほど 焼く。必ず熱いうちに食べること。


◆ 『  ポ テ ト ス ー プ  』  ◆

●<材料>
じゃがいも1kg
人参2本
たまねぎ3個
ニンニク2かけ
マジョラム
ローレル
スープの素
生クリーム 1/4カップ
塩・こしょう




●<作り方>

1・じゃがいもは皮をむいて乱切り、人参、たまねぎも同じぐらいの大きさに切 る。にんにく、スープの素、塩、こしょう、スパイスとともに鍋に入れて、鍋底 に溜まるくらいのごく少量の水で煮る。途中で焦げ付かないようにときどき様子 を見る。

2・柔らかく煮えたら鍋の中身をすべてミキサーにあけ、なめらかなピュレ状に なるまでブレンドする。濃すぎるようなら湯で溶いたスープの素を加えて調節す る。

3・味を調え生クリームを加えて完成。



◆ 『  ポ ー ク ロ イ ン  』  ◆

●<材料>
豚ヒレ肉 2本
グリーンペッパー

スープの素 1個
小麦粉

●<作り方>
1・豚ヒレ肉に塩を擦り込み、少量の油をしいたフライパンでまんべんなく焼き 色を付ける。グリーンペッパーを粒のまま加え、フタをして弱火で25分焼く。

2・肉を取り出し、適当な厚さにスライスする。

3・ソースを作る。フライパンに残った肉汁をかきまぜながら、小麦粉をダマに ならないようにふるい入れる。スープの素を砕いて加え、水を少しずつ加えて濃 度を調節して再度火にかける。とろみがつくまで煮詰めたら生クリームを加える 。スライスした肉に添えて出す。



◆ 『  つ け 合 わ せ の じ ゃ が い も と ミ ッ ク ス ベ ジ タ ブ ル  』  ◆

●<材料>
じゃがいも1kg

ブロッコリー、
にんじん、
カリフラワーなど合わせて1kg(生でも冷凍でも)
イタリアンハーブミックス マーガリンまたはバター

●<作り方>
1・じゃがいもは皮をむいて大きめに乱切りし、塩と水少々で柔らかくなるまで 蒸し煮にする。焦げつかないよう途中で様子を見る。

2・ミックスベジタブルも一口大に切り、塩を加えて適度に歯応えが残るくらい まで蒸し煮に。煮えたら火を止めて残った湯を捨て、ハーブとマーガリンを加え て軽く混ぜる。



◆ 『  桃  の  チ  ー  ズ  ケ  ー キ 』  ◆

<材料>(直径28cmの底の抜ける焼型1個分)
タルト台用:
マーガリンまたはバター 125g
砂糖 100g
卵 3個
小麦粉 250g
ベーキングパウダー 茶匙2杯

トッピング用:
黄桃 2缶(約400g)
クリームチーズ 200g
砂糖 50g
卵 1個






<作り方>

1・タルト台を作る。砂糖と卵、マーガリンをなめらかになるまで混ぜ、ベーキ ングパウダーと合わせてふるいにかけた小麦粉を加えてさらに混ぜる。焼型の内 側にマーガリンを塗って生地を底に平らに伸ばす。

2・トッピングを準備する。黄桃は缶から出し、ザルに上げて水気をよく切って おく。クリームチーズと砂糖、卵をよく混ぜ、1の生地の上にまんべんなく塗り 、その上に黄桃を並べる。180度に熱したオーブンで30分ほど焼く。

 ライター:KUNKA フォト:Takako

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