かつて皇帝の都であった北京では、暑さ厳しい夏を乗り切るための知恵と工夫が、家庭の台所に息づいています。今回は、そんな北京の暮らしから生まれた涼を感じるお料理をご紹介します。北方らしいしっかりした味わいと、夏でもすっと食べられる軽やかさを兼ね備えたメニューで、古都の風を感じてみませんか？

● 北京鍋貼（グオティエ）
黄金色に香ばしく焼き上げた餃子、「鍋貼」は北京の定番お惣菜。北方では「水餃子」が主流ですが、焼き目のカリッとしたこのスタイルは、外は香ばしく中はジューシー。大家族が集まる日には、大鍋で一気に焼き上げる姿が北京の台所の風物詩です。

● 北京麻醤涼麺（マージャンリャンミエン）
夏の北京では、街角の屋台や家庭の食卓に必ず登場する冷たい麺料理。胡麻とピーナッツをふんだんに使った濃厚なタレが、つるりとした麺に絡み、ひと口ごとに香ばしさが広がります。薬味のキュウリやにんにくで、さっぱりといただくのが北京流。


● 西湖牛肉羹（シーフーニウロウゴン）
本来は杭州の名物ながら、その優しい味わいが北京の人々の心もとらえ、家庭料理として根付いた一品。とろみのあるスープに細かく刻んだ牛肉と香味野菜が入り、疲れた胃腸にそっと染み渡ります。詩人・蘇東坡も愛したという杭州の風景「西湖」を思わせる、静かな滋養の味。

● 老北京杏仁豆腐
西太后の時代から続く、宮廷由来のデザート。北京式の杏仁豆腐は、香り高いアーモンドの風味を生かしながらも、口当たりはあっさり。夏の午後、涼を求めて縁側に座るような、やさしい甘さが広がります。香港のミルキーなタイプとはまた違う、凛とした涼しさをお楽しみください。

⑤季節の前菜盛り合わせ　茶懐石風にお楽しみください