料理映画:カンパイ! 世界が恋する日本酒 




◆映画:
カンパイ!
世界が恋する日本酒



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<映画紹介>
世界のSAKEになりつつある日本酒を支える
3人の男たちに迫ったドキュメンタリー

『カンパイ! 世界が恋する日本酒』
7/9(土)から、シアター・イメージフォーラム ほか、全国順次公開
※劇場情報は公式サイトでご確認ください。http://kampaimovie.com/

text/キヌガサマサヨシ(夏休み計画)



『日本人も知らない日本酒の話』という本に出会ったのは、もう10年以上も前のことでした。ジョン・ゴントナーというアメリカ人が日本酒について書いた本です。日本人でもワインの本を書いている人はたくさんいるので、同様に日本酒に詳しい外国人がいても驚くことではないはずなのに、日本酒は日本で日本人が飲むもの、という思いがあったからか、「へー、アメリカ人がねー」と意外に感じました。世の中的にも、当時は外国人が書いたということが大きくクローズアップされていた気がします




その著者であるジョン・ゴントナーを含め、日本酒を取り巻く人々の中でアウトサイダーと言われる3人の男たちを通して、日本酒の「今」を描いたのがこの映 画『カンパイ! 世界が恋する日本酒』です。アメリカ在住の日本人監督が、海外の人に見てもらうために作ったドキュメンタリーですが、当事国である日本でも自国の文化として日本酒にもっと関心を持ってもらいたいと、日本でも公開されることになりました。




現在、日本には1500以上の酒蔵がありますが、その数は年々減っています。日本は人口数そのものが減り続けているので、消費量が減るのは当然ですが、それ以上に飲酒量が減り、日本酒離れが進んでいることが、大きな原因です。でも、そんな中で唯一伸びているのが、輸出量です。海外への日本酒の輸出量は、2013年の統計では、その10年前と比べて10倍ほども伸びています。2013年12月には「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されたので、その後の輸出量はさらに飛躍的に伸びていると思われます。




日本酒伝道師のジョン・ゴントナーとともに映画に登場するのは、日本で初の外国人杜氏のフィリップ・ハーパーと、岩手の実家の老舗酒蔵を継いだ 蔵元の久慈浩介。日本の酒業界の代表とするには随分と偏った人選に思われるかもしれませんが、どうしてどうして。昔のやり方に固執せず新たな可能性を探ったり、失われかけていた古いやり方を再現して個性を生み出したリと、停滞して衰弱する一方だ った日本酒業界に革新をもたらした男たちです。



1988年に英語教師として来日したジョン・ゴントナーは、同僚の家で酒を飲んだときにその味に魅了されました。そしてすっかりはまって酒を飲み歩くようになり、数年後には英語で酒のコラム を書くようになりました。今では外国人のシェフなどを対象に、日本酒についてレクチャーする講座を国内外で開いています。さらに、海外への日本酒の輸出にも関わっていて、アメリカを中心に日本酒を広める活動をしています。日本酒について英語で書いた本は4冊も出していて、欧米の日本酒好きにはかなり知られた存在みたい。




フィリップ・ハーパーはイギリスのオックスフォード大学を卒業した秀才。彼もまた英語教師として来日して、たまたま飲んだ日本酒に魅了されました。英語教師としての2年の任期を終えると、奈良の酒造 メーカーである梅乃宿酒造に就職し、10年かけて酒造りの経験を積み、2001年に資格試験を受けて杜氏になりました。現在は京都の木下酒造 に所属。木下酒造に迎えられて最初に作った日本酒は、全国新酒鑑評会で金賞を受賞しました。彼が着目したのは、古い時代の酒造 り。軽くてさらりとした飲み口の吟醸や大吟醸が好まれている時代に、あえて余計に手間のかかるどっしりと濃醇なフルボディの酒でした。その後に手掛けたのも、主流の淡麗とは真逆の超甘口。マーケティグではなく、自分がうまいと思う酒を造 る。信念に基づいた彼の酒造りは、海外からも高く評価されています。



蔵元の久慈浩介は、東京農大で酒造りを学んだ後、東京での会社勤めを経て、岩手に帰省して「南部美人」の五代目となりました。酒蔵に戻った当初は、古くから酒造 りを担当していた杜氏や蔵人たちに受け入れられず、自分が学んできたことを取り入れようと改革を持ち掛けても聞き入れられず、軽くあしらわれて悔しい思いをしました。売り上げの低迷で一時は廃業も考えましたが、思い切ってそれまでの杜氏の勘に頼った酒造 りをやめ、データを綿密に収集して分析するという科学的な醸造方法に切り替え、2年目にして大吟醸で全国新酒鑑評会の金賞を獲得しました。そして海外に日本酒を売り込むために、日本酒輸出協会を立ち上げ、頻繁に現地にも出向いて奔走しています。

この映画は、日本酒がどのように作れられているかを紹介する、というものではありません。異端の3人を通して、日本酒が置かれている厳しい現状と、いかにしてその苦境から蘇ろうとしているかを描いています。日本固有のものだ と思っていた日本酒が、世界で認められ日本だけのものではなくなることで救われようとしている、ということを教えてくれます。うれしくもあり、寂しくもあります。



ちなみに、2014年のデータではアメリカには5軒の酒蔵があるそうです。日本にもワイナリーがあるように、世界的に日本酒に興味を持つ人が多くなったことで、海外でも「sake」が作られるようになりました。映画ではそうしたアメリカの酒蔵や日本酒専門店も紹介しています。酒屋や居酒屋で「この日本酒はどこ産ですか?」と尋ねる日が来るのも、そう遠いことではないかもしれません。



ゴントナーは映 画の中で、「販売側が自信を持って日本酒を語れなければ、売ることなんて出来ないし、成長は見込めない」と、厳しい意見も語っています。日本人はいまでも欧米のものの方が上等と思う傾向にありますもんね。ワインはおしゃれでスマートだけど、日本酒はグダグダな酔っ払いおやじが飲むものという悪い印象をそのままにして、本気でイメージチェンジに取り組んでこなかったことも、国内での消費を落ち込ませる一因 だったと言えるでしょう。あまりにも身近にあって、見過ごしていたということですね。



じつは「日本酒」という言葉には、商標的な使用の規制はないのだ そうです。国内では酒税法による「米を使って醸造して濾したもの」という規定はあるのですが、それは課税のためのもの。フランスのシャンパーニュ地方で作ったものでなければシャンパンとは言ってはいけないとか、バーボンと呼べるのはアメリカのケンタッキー州で作られたコーンウイスキーだ け、という呼称についての定義が、日本酒にはないのです。これはいかん、と日本でも日本酒のプライドを守るために、国内に産地を限定した法的な定義を設けようという動きもあるようです。



見た目はどれも同じでも、甘口もあり辛口もあり、どっしりとしたものから水のようにさらりとした喉越しのものもある日本酒。ワイン以上に相性のいい料理の幅が広いとも言われています。様々なマリアージュを試して、ぜひ外国人の先生たちにも日本酒の楽しみ方を紹介してもらえたらなー、と思います。

 

今回の映画の公開を記念して、オリジナルの日本酒が販売されています。映画にも登場する恵比寿にある日本酒の聖地「GEM by moto」の店主・千葉麻里絵さんが、米・酵母・種麹の選択から、仕込配合まですべてを監修し、「南部美人」の木桶で仕込んだ一本限定醸造 です。酵母は通常の「南部美人」では使用されていない6号酵母。しっかりとした旨味と酸味を持つバランスの取れた仕上がりの、アルコール分15%の低アル原酒です。「KAMPAI! FOR THE LOVE OF SAKE」720ml 1,890円(税込)●矢島酒店www.yajima-jizake.co.jp

 

監督:小西未来
出演:フィリップ・ハーパー、ジョン・ゴントナー、久慈浩介
製作:2015年 日本・アメリカ 95分
配給:シンカ
(C)2015 WAGAMAMA MEDIA LLC.

 

 

 
 




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