映画:マダム・イン・ニューヨーク 
 


 
 
<映画紹介>  

お菓子作りが得意な主婦が
人生の輝きを取り戻す
インドのハッピームービー


『マダム・イン・ニューヨーク』



シネスイッチ銀座(東京)、シネマ・ジャック&ベティ(横浜)、シネマイクスペアリ(千葉)など全国で順次公開中。劇場情報などの詳細は下記の公式サイトでご

確認ください。


http://madame.ayapro.ne.jp

 




今回紹介するのは、公開中のインド映画『マダム・イン・ニューヨーク』。インドでは記録的な大ヒットとなって数々の賞を受賞し、フランスなどでも絶賛された名作です。

主人公は料理が好きなインドの主婦、シャシ。夫はビジネスマンで、インドの中ではかなり裕福な中流家庭。生意気盛りの娘と、甘えん坊な息子の母親でもあります。何不自由ない暮らしを与えてくれる夫には献身的に尽くし、子育てに励む毎日を送っています。



よき妻でありよき母であるシャシの楽しみはインドの伝統のお菓子、ラドゥを作ること。彼女のラドゥは近所でも評判で、注文を受けて販売するほどの腕前です。

ところが、そんな彼女が家族にないがしろにされ、自信を失っていきます。主婦が家事をするのは当たり前、料理がうまいのも当たり前という扱い。生意気な年頃の娘は、「ママは英語もできないくせに」と馬鹿にします。夫はというと、パーティの席で妻のラドゥを褒められると、「妻は菓子作りしかとりえがない」と無神経な発言。家族のために頑張っているのに誰にも認められず、寂しさを募らせます。



そんなとき、ニューヨーク郊外に住む姉から連絡が。姪が結婚するのでその披露宴の手伝いをしてほしいと。インドの結婚式と言えばド派手なことで有名で、多くの客を招いてとにかく盛大ににぎやかに催すのが慣習となっています。その華やかさは、マハラジャでさえも娘を3人嫁がせたら破産する、と言われるほど。ゆえに、準備も大変で、シャシは家族より一足先にアメリカへと旅立ちます。



アメリカに着いたシャシは、「4週間で英語が話せる」という英会話学校の広告を目にし、意を決して飛び込みます。披露宴の準備の合間を縫って、姉や姪にも内緒で英会話を学ぶうち、様々な国から来たクラスメイトたちとともに成長し、失いかけていた自信を取り戻していきます…。



この映画、ひとりの主婦のエピソードではなく、じつはインドの社会問題を描いています。いまでこそ小学生が当たり前のように99×99の掛け算を暗算し、公用語のヒンズー語なみに英語が話せる教育先進国として知られていますが、じつは女の子が学校に通うことが一般的と捉えられるようになったのは90年代末のこと。それまでは、いずれ嫁に出す娘を学校に通わせても意味がない、と思われていて、女の子は弟妹の面倒をみたり家事の手伝いをすることが当然とされていました。女の子で学校に行けるのはお金持ちの家の子だけ。英語どころか、学校に行きたくても行かせてもらえない子がたくさんいました。アラフォー世代の監督は、英語が話せなかった自分の母親の姿をシャシに重ねていたそうです。

インドと言えば強烈でゆるぎない個性を持つ国というイメージが強いですが、じつはインドもグローバル化が進んでいて、人々の暮らしもどんどん欧米化しているのだとか。東京ガスのCMで「ばあちゃんの料理が古臭いんだよ」と孫が祖母を非難するシーンがありますが、インドでも家庭内の教育格差や価値観の相違によって、母親を馬鹿にする子供が増えていると言われています。子供が児童労働から解放されて教育の機会を得られるのは喜ばしいけれど、急速な経済発展のひずみで伝統や文化が失われていくこと、都会ではそんな状況にあるのに田舎ではいまも学校に行けない子供たちがいるというインド社会の問題を、監督はこの映画で訴えているのでしょう。

最近は伝統的な菓子よりもケーキやスナック菓子を好み、特別な儀式などの時にしかサリーを着ないという若者が増えているそうな。ニューヨークに行っても毎日サリーを着て過ごし、家族のために尽くすことを第一に考えるシャシは、絶滅危惧の古風な主婦として描かれています。

ちなみに、ラドゥとはヒヨコ豆の粉をベースに作る昔ながらのお菓子。ヒンズー教の祝祭のには欠かせないもので、像の姿をした神様、ガネーシャの好物と言われています。ガネーシャの絵の多くは、手の平に丸いものを載せていますが、それがこのラドゥ。

ヒヨコ豆の粉にカシューナッツやレーズンを加え、カルダモンで香りを付け、ギィーを練り込んで丸めます。そのままで食べるものもあるし、油で揚げるものもあるようですが、基本的な材料は同じです。日持ちさせるために大量の砂糖を使うのでめちゃ甘。でも、スパイシーなチャイと一緒にいただくと、クセになりそうです。

映画では、ラドゥを作るシャシの生き生きとした姿が印象的です。最後には彼女の作った絶品のラドゥが周囲の人々を幸せにするハッピーストーリーで、モヤモヤした気分を吹き飛ばしてくれるはずです。




なお、現在このラドゥが食べられるキャンペーンを実施しています(都内での本作上映期間中)。インド大使館御用達のインド料理店「ムンバイ」の九段、丸の内、銀座、神楽坂、四谷、錦糸町、町屋、三田、市ヶ谷、渋谷の10店舗と、南青山にある姉妹店の「ポンディシェリ」にて、『マダム・イン・ニューヨーク』の入場チケットの半券持参で、ラドゥがついたお得なメニューがいただけます。

1)ランチ:カレーセットご注文の方に、ラドゥ1個プレゼント(お弁当などテイクアウトは除く)。
2)カフェタイム&ディナータイムに、ラドゥ2個&コーヒー(またはチャイ)のデザートセット¥500(税込)を半額に。

※渋谷店は1)のみ提供。

また、半券をお持ちでない方も、コラボメニューとしてラドゥを1個120円(税込)で販売しているので、この機会にぜひ召し上がってみてください。

 

監督/ガウリ・シンデー
キャスト/シュリデビ、アディル・フセインほか
製作/インド 2012年 
配給/彩プロ
上映時間/134分

© Eros International Ltd.

 

text/キヌガサマサヨシ(夏休み計画) 


 

 
 



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